【栄養×予防シリーズ 第5回】 心臓と血管を守る食べ方

2026年05月06日 16:03

オメガ3・CoQ10・マグネシウムで、一生動ける体へ


はじめに——「まだ若いから大丈夫」は、30代から崩れはじめています。

「心臓病って、お父さんやおじいちゃんの話でしょ」

そう思っている方は、多いと思います。
でも、実はそうではありません。

動脈硬化——血管が硬く、狭くなっていくプロセスは、20代から静かに
はじまっていることが、複数の研究で明らかになっています。

自覚症状がないまま進行し、ある日突然「狭心症」「心筋梗塞」「脳卒中」
として現れる。それが心血管疾患の怖さです。

さらに、女性には特有のリスクがあります。

更年期を境に、女性ホルモン(エストロゲン)の保護効果が失われ、
一気に心血管リスクが上昇するのです。

30〜40代の今こそ、血管を育てる食べ方を知っておく。
それが、将来の自分への最大の贈り物になります。


このシリーズでは毎回、「食べて防ぐ」という視点から、臓器と栄養の関係を紐解いています。

今回のテーマは心臓・血管。注目成分はオメガ3脂肪酸・CoQ10・マグネシウムです。

心臓と血管の役割——あなたの体を24時間支えるポンプとパイプ

心臓は、1日に約10万回も収縮・拡張を繰り返す、体の中で最も働き続ける筋肉です。

全身に血液を送り出し、酸素・栄養を届け、老廃物を回収する
——そのすべてを、休むことなく担っています。

そして血管は、その血液が流れる通り道。
全身の血管をつなげると、その長さは約10万km(地球約2.5周分)にもなると言われています。

この「ポンプ(心臓)」と「パイプ(血管)」が健やかであることが、全身の健康を支えているのです。

血管の壁(内皮)は非常に繊細で、以下のような状態で傷つきやすくなります。

高血糖・高インスリン状態
酸化ストレス(活性酸素の過剰産生)
慢性的な炎症
高血圧による物理的ダメージ

傷ついた血管壁にコレステロールが入り込み、「プラーク(動脈硬化巣)」が形成される
——これが動脈硬化の始まりです。

30〜40代の女性に特有の心血管リスク

① エストロゲンの保護効果が低下しはじめる

エストロゲンには、血管を柔らかく保ち、善玉コレステロール(HDL)を高め、
炎症を抑える働きがあります。
30代後半から分泌量が揺らぎはじめ、40代に入ると一気に変動が大きくなります。
更年期以降、女性の心血管疾患リスクは男性と同水準、あるいはそれ以上になることも
研究で示されています。

② ストレスと睡眠不足が血圧を上げる

仕事・育児・家事を抱える30〜40代は、慢性的なストレス状態にあることが多く、
コルチゾール(ストレスホルモン)の過剰分泌が血圧上昇や炎症促進につながります。

③ 鉄欠乏性貧血が心臓に負担をかける

月経のある女性は鉄不足になりやすく、貧血があると心臓はより多くの血液を送り出そうと
するため、心臓への負担が増えます。

④ 隠れた脂質異常

自覚症状がなくても、30代から中性脂肪や小粒子LDLコレステロールの異常が起きている
ことがあります。特に糖質過多の食生活は中性脂肪を急上昇させます。


心臓・血管を傷める「NG習慣」

× 精製糖質の過剰摂取
白米・白パン・菓子パン・スイーツを食事の中心にする生活は、食後血糖スパイクを繰り返し、
血管の酸化ストレスを高めます。

× トランス脂肪酸の摂取
マーガリン・ショートニング・一部のお菓子に含まれるトランス脂肪酸は、LDLを上げHDLを
下げる作用があり、心血管リスクを高めることが研究で示されています。

× 運動不足
全身の血流が滞ると、血管内皮機能が低下します。「座りっぱなし」の時間が長い人ほど、
心血管リスクが高まるというデータがあります。

× 慢性的な睡眠不足
睡眠が6時間未満の状態が続くと、交感神経が優位になり血圧が上昇しやすくなるほか、
炎症マーカーも増加することが報告されています。

× 加工食品・外食中心の食生活
塩分・添加物・酸化した油の過剰摂取が、血管ダメージを蓄積させます。

× 喫煙・受動喫煙
タバコは血管内皮を直接傷つけ、動脈硬化を強力に促進します。


注目成分① オメガ3脂肪酸——「血管の消炎剤」とも呼ばれる理由

オメガ3脂肪酸とは?
多価不飽和脂肪酸の一種で、主に以下の3種類があります。

EPA(エイコサペンタエン酸):青魚に豊富。炎症抑制・中性脂肪低下
DHA(ドコサヘキサエン酸):青魚・藻類に豊富。脳・血管の健康維持
ALA(α-リノレン酸):えごま油・亜麻仁油に豊富。体内でEPA・DHAに変換される(変換率は低め)

心臓・血管への働き
研究では、EPAおよびDHAの継続摂取が以下の効果をもたらすことが示されています。

中性脂肪の低下(最大で20〜30%の低下を示す研究もあり)
血小板凝集の抑制(血液をサラサラに保つ)
血管内皮機能の改善
軽度の血圧低下作用
抗炎症作用(炎症性サイトカインの産生抑制)

特に注目すべきは、慢性炎症との関係です。動脈硬化は「炎症性疾患」という側面があり、
オメガ3が炎症を根本から抑えることで、プラーク形成を防ぐ働きが期待されています。

食事からの摂り方

食品オメガ3含有量の目安(100gあたり)さば(生)EPA+DHA 約2,700mgいわし(生)
EPA+DHA 約2,300mgさんま(生)EPA+DHA 約2,400mgえごま油ALA 約58gくるみALA 約9g

目安:週3〜4回は青魚を食卓に。えごま油はサラダや納豆にかけて加熱しないで使う。

注目成分② CoQ10(コエンザイムQ10)——心臓を動かすエネルギーの要

CoQ10とは?

CoQ10は、全身の細胞のミトコンドリアに存在する補酵素で、エネルギー(ATP)の産生に
不可欠な成分です。特に心臓の筋肉に最も高濃度に存在しており、心臓が休まず動き続けるための
エネルギー工場を支えています。

さらに、強力な抗酸化物質として、血管内の酸化ストレスを軽減する働きも担っています。

問題は「年齢とともに減少する」こと

体内のCoQ10は20代をピークに減少しはじめ、40代では若い頃の半分程度になるとも
言われています。また、コレステロールを下げるスタチン系薬を服用している方は、
CoQ10の合成が阻害されるため、特に不足しやすいことが指摘されています。

心臓・血管への働き

心筋のエネルギー産生をサポート
酸化したLDLコレステロールの生成を抑制
血圧の軽度低下(研究によっては収縮期血圧を数mmHg低下)
心不全患者の症状改善に関するエビデンスが蓄積されている

食事からの摂り方

CoQ10は動物性食品に比較的多く含まれます。

食品CoQ10含有量の目安(100gあたり)牛の心臓約113mgさば約64mg牛もも肉約31mg
ほうれん草約10mgブロッコリー約8mg
食事からの摂取量は一般的に限られるため、不足が気になる方はサプリメントの活用も一つの
選択肢です(一般的な摂取量の目安は1日30〜200mg程度。医師・管理栄養士に相談を)。

注目成分③ マグネシウム——「血圧の番人」と呼ばれるミネラル

マグネシウムとは?

マグネシウムは体内に約300種類以上の酵素反応に関わるミネラルです。骨の形成・筋肉の弛緩
・神経の調節・血糖管理など、実に幅広い役割を担っています。

心臓・血管への働き
マグネシウムは血管平滑筋を弛緩させる作用を持ち、血圧の調整に直接関わっています。
研究では、マグネシウムを十分に摂取している人ほど、高血圧・心疾患・脳卒中のリスクが
低い傾向が見られると報告されています。

血管を拡張させ、血圧を下げる
不整脈の予防(心臓の電気信号の調整)
インスリン感受性の改善(血糖スパイクを抑制)
カルシウムと拮抗し、血管の過収縮を防ぐ

現代人はマグネシウムが慢性的に不足している

加工食品の普及・精製された食品の摂取増加・ストレスによる消耗などにより、
現代人の多くがマグネシウム不足状態にあると言われています。
特にカフェイン・アルコール・利尿作用のある食品はマグネシウムの排泄を促進するため、
注意が必要です。

食事からの摂り方

食品マグネシウム含有量の目安(100gあたり)素焼きアーモンド約270mg、
ほうれん草(ゆで)約69mg、玄米(炊いたもの)約49mg、木綿豆腐約57mg、
わかめ(乾燥)約1,100mg、ダークチョコレート(カカオ70%以上)約176mg

目安:日本人女性のマグネシウム推奨量は1日約290mg(30〜49歳)。
食事で摂りきれない場合はサプリメントの補助も有効です。

今日からできること——心臓・血管を守る食習慣7選

1. 青魚を週3〜4回の食卓に

さば缶・いわし缶の活用が手軽でおすすめ。骨まで食べられるため、カルシウム補給にもなります。

2. 調理油をオリーブオイル・えごま油に切り替える

炒め物はオリーブオイル(熱に比較的強い)、ドレッシング・仕上げにはえごま油を。
酸化しやすいえごま油は加熱厳禁、冷暗所で保管を。

3. 緑の野菜・海藻・ナッツを毎日の食事に

マグネシウム・ファイトケミカル・食物繊維を同時に摂れます。

4. 精製糖質を複合糖質に置き換える

白米→玄米・雑穀米、白パン→全粒粉パンへ。血糖スパイクを抑えることで、
血管内皮へのダメージを減らします。

5. 加工食品・外食の塩分に意識を向ける

1日の食塩摂取目標は女性6.5g未満(日本人の食事摂取基準2020年版)。
ラーメン1杯だけで5〜7gを超えることも。

6. 水分をしっかり摂る

血液の粘度を下げ、血栓リスクを下げるためにも、1日1.5〜2Lの水分摂取を心がけましょう。

7. 深呼吸・軽い有酸素運動を日課に

栄養だけでなく、血流を促すことが大切です。1日20〜30分のウォーキングや、
腹式呼吸によるリラックスが自律神経を整え、血圧の安定につながります。


まとめ——血管は「育てるもの」

心臓・血管の健康は、一朝一夕では手に入りません。

でも、毎日の食事の積み重ねが確実に血管を育て、20年後・30年後の自分を変えていきます。

オメガ3で炎症を鎮め、CoQ10で心臓のエネルギーを支え、マグネシウムで血圧を整える。

この3つの成分を意識した食事を、日常のリズムの中に取り入れていきましょう。

「食べて防ぐ」ことの力を、ぜひご自身の体で感じてみてください。


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